赤の世界
3. 消えた初恋
今日もいつも通り夢を見た。
世界は綺麗な赤に彩られ
これでもかと輝いていた――。
ピピピ、ピピピ。
機械的な音が
しんとした部屋に響く。
目覚ましの音だ。
「うん…あ…悠…おはよ…」
「おはよう、アユミ」
隣で本当に拙い声をあげるアユミを昨日よりも可愛く思った。
抱きしめてやると
アユミが戸惑った笑顔になる。
「本当に朝の悠は別人みたい」
「そう?」
「うん…でも、嬉しい…」
そう言ってアユミは
リモコンに手を伸ばし
エアコンのスイッチを入れる。
冷えた部屋と乾燥のせいか
少し喉が痛い。
アユミもそう思ったのか
インスタントのスープを作ると言いキッチンへ降りていった。