赤の世界
 
時間を持て余しているのに
遊び癖は収まる傾向にあった。

本当に夢の中の女のコに
恋をしたかのように

女のコと遊ぶ気が
まったく起こらなくなった。





けれど夢の中のコは
あれから一度も現れない。

赤い夢は見れるのに。

いつもの街並みの中で
いつもの雪雲の空の下で

皆ちゃんと傘を差している。

傘のないあのコは見当たらない。





赤い夢を見て
幸福なはずなのに
最近はため息をつきながら
朝のコーヒーを飲む。

俺の両親は共働きで
俺が目を覚ます頃には
家はいつもガランとしている。

今朝もそのリビングで
コーヒーを淹れていると

テーブルの上に
メモがある事に気付く。





『お誕生日おめでとう。遅くなるから、ケーキ買っておいて』





それは父の字だった。


 
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