赤の世界
「それ下さい」
自分の誕生日ケーキだと思うと
何を買うか考えるのも嫌で
はじめに目に付いた
チュコレートのケーキを選んだ。
機械的に料金を支払い店を出る。
父に従った自分を
励ましてやりたい思いだった。
乾燥した空気が
いっそう纏わりついてくる。
喉の痛みが
更に酷くなってきた。
チェーン店のカフェが
不意に目に入って
喉を潤すために
立ち寄ることにした。
急いで家に帰ったって
する事はないんだ。
「コーヒーください」
また機械的な会話を済ませ
席に着く。
少し混雑しているようだった。
「すみません」
コーヒーを飲み始めてすぐ
女の人が声を掛けてきた。