赤の世界
 
「私も今日誕生日なの」

「え…」

「また偶然だね!」

告げられた言葉に驚いて
言葉に詰まる。

楓はそんな俺を笑って
おいしそうにコーヒーを飲んだ。





そして話していくうちに

今日で20歳になる事

大学が期末試験中で
友達とも遊べないこと

一人暮らしだから
家族とも会えないことを聞いた。

「ケーキだけは買っちゃった」

寂しいよねなんて言いながら

明るく笑っていた。





「ねぇ、君は?」





“君は?”と聞かれて
名前を教えてなかったと気付く。


「俺は悠でいいよ」


そう告げると
楓はこくんと頷いた。

それからケーキを買う事になった
恥ずかしい経緯を告げる。

楓は少し笑って
そして少し俺を羨んだ。


 
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