赤の世界
「で、どこ行ってたの?」
景はベットに腰掛けると
とたんにニヤつきだした。
「アユミ?ユリ?サエ?」
「そんなんじゃねーよ」
ふざけ合っていると
冷蔵庫へ入れずに
部屋まで持ってきてしまった
ケーキの箱に気付いた。
「あ…ケーキあるけど食う?」
「え?!食う!」
景の答えを聞いて
箱をキッチンまで運び
適当に切る。
せっかく楓から貰ったんだ
そう思い自分の分も切り分けた。
「はい」
部屋に戻って
景に切ったケーキを手渡すと
景が変な顔をする。
「なぁ、これって誕生日ケーキ?」
「あ、うん」
「うわっ、やっぱり」
急に慌てだす景を放って
俺は先にケーキを食べだす。
「いやいや、おじさんおばさん差し置いて食っちゃっていいの?!」
景の言葉を聞いて
そんな事を気にしていたのかと
つくづく律儀だと思った。
「全然いいよ」
もともとウチの家族は
甘いものをそんなに食べない。
きっとこの小さなケーキですら
食べきれないはずだ。