赤の世界
 
景が驚くのは当たり前だ。

自分自身はっとした。





好きだって感情も
よく分からないくせに。

(何を言ってるんだ。)





でもどこか納得もした。

楓を見た瞬間
息を飲むほど綺麗だと思って

それは夢の中で逢った
あの女のコの事を想う

あの感情と似ていた。





思い出してみると
夢の中のあのコのように

楓の髪はサラサラ揺れて

気に入っていたシオリの髪が
比べ物にならない程
ちゃちなものに感じる。





そしてなにより
楓と過ごした時間は
とても居心地がよかった。

心の中が

いっぱいに満たされるのに
欠落感を埋めてくれるのに

なにも騒がしくない。


 
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