赤の世界
「髪が長くて、目が大きくて…」
(睫毛が長くて、綺麗で。)
そう続けようとしたのに
景の表情がまた変わっている。
よく見ると
俺の嫌いなあの目をしてる。
(どうしてそんな目をするの。)
せっかく好きな人が出来たのに。
「景…?」
小さな決心をして
哀しそうな目に向き合うと
あっさりと視線は消え
景が笑う。
「悠ってロング好きだよね」
景は前にも
同じような事を言っていたっけ。
「おかしい?」
問いかけると大げさに首を振る。
「短いのが好きだと思ってた」
景は笑いながら俯いた。
確かに遊んでいる
アユミやユリ達は髪が短い…
あれ?短かったっけ?
顔を浮かべようとするけど
女のコ達の顔が思い出せない。
アユミの小さい唇や
ユリの真っ白い肌が
断片的に思い出せるだけで。
あとはどれも
楓の姿にかき消されてしまう。