赤の世界
「うわっ?!もう6時半?!」
ぼうっとしていると
景が急に大声を出した。
「あ…ホントだ」
気がつくと窓の外は
すっかり暗くなっている。
「悠悪い!俺そろそろ帰るな…」
「ううん、忙しいのにありがと」
「あ!これ!プレゼント!」
「あ、ありがと…!」
青い紙袋を渡して
景はばたばたと荷物を纏める。
紙袋には大きく
シュークリームと書かれていて
また甘いもの…と
思ってしまったのは内緒。
慌しい状態を見て
景が受験生だという事を
思い知った気分だ。
「じゃあまた!」
彼女出来たら教えろよ?
そう言い残して
景は颯爽と帰って行った。
ドアを開けたときに
入ってきた冷たい風に
ぶるっと体が震える。
窓から空を見ると
すっかり曇っていて
星も月も見えない。
まるで雪でも降りそうな天気だ。
「雪雲…」
無意識に曇った空の様子を
赤い夢の空を重ねた。
夢の中の女のコを想うと
自然と楓の顔が浮かんで
(みぞれ雪が降ったなら…。)
しばらくの間そうやって
動きさえしない
重たそうな雪雲を
ぼうっと眺め続けていた。