赤の世界
 
そんな声が届いたのか
不意に女のコがこちらを向く。

振り返るときに
キラキラと彼女の髪が

赤い色を輝かせて
絹のようにしなやかに揺れた。





せっかく彼女が
こちらを向いてくれたのに。

何故か視界が
ぼんやりと霞んでいく。

彼女の顔がよく見えない。



霞の中で見えたのは
大きな目が笑っていたこと。

少し幼いけれど
大きくて綺麗な瞳だった。





(何か嬉しい事があったんだね?)

俺がそう問うと
こくんと彼女が頷く。

(よかったね。)

俺より背の低い
彼女の頭を撫でたかったけど

伸ばしても伸ばしても
手が上手く届かない。

悲しくなって下を向くと
彼女が俺に何かを差し出した。


 
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