赤の世界
窓から外を見ると
昨日までの重たそうな雲は
嘘のように消え失せて
晴天が一面に広がっている。
「雪雲じゃなかったんだ…」
雨すら降った跡がない。
気分を変えたいのに
どうしても夢が頭に浮かぶ。
もう落ち込んだりしないから
またあのコに逢いたい。
霞んで見えなかった顔を
きちんと見て見たい。
大きくて少し幼い
綺麗な瞳しか見えなかったのに
吸い寄せられるような
美しさを感じたんだ。
赤く輝く長い髪が
優しい目によく似合っていて
本当に幸せそうに笑っていた
彼女の笑顔をちゃんと――
はっきりと見て見みたい。
思い返すとあの目は
昨日出会った楓の目に似てた。
幼くはないけれど
大きくて睫毛の長い目。
伸びた髪も綺麗で
まるであのコみたいだ。
そう思うと改めて
楓が美しい人だとわかる。
昨日のカフェで話したときの
居心地のいいリズムが
弾むように心に響いた。
(また会いたいな。)
ぼうっとそんな事を考えたせいで
放っていたコーヒーは
気付くとすっかり冷めていた。