赤の世界
そういえば楓と過ごし出して
変わったことがもう一つあった。
それは、あの夢の事。
赤い色彩が特徴的なあの世界に
変化が訪れていた。
いつも空を覆っていた
あの雪雲がぽっかりと消えて
代わりに空からは
沢山の光が差し込んでいた。
その光は目も眩むような
眩しくて優しい黄色をして
街並みは黄色の陽だまりに
すっぽりと包まれていた。
(赤くない…。)
赤い色彩は隅へ追いやられ
日の当らない陰りに
ひっそりと残っていた。
見慣れた世界の色が変わる。
それは少し悲しくて。
だけど街を歩く人々は
長すぎた雪に飽きていたのか
嫌な事を忘れるように
傘を捨てている。
木漏れ日の中で
幸せそうに歩く人々を見ると
日が差した世界になって
良かったのだと思った。
夢の世界が
欠落感の薄れた俺を
暖かな日差しで
喜んでくれている
そんな風にも感じた。