赤の世界
(これってまるで。)
赤い夢の中のようだ。
全てが赤く染め上げられて
全てが赤で繋がれている。
輝くような赤で。
ふと楓を見ると
髪が風にサラサラと揺れた。
揺れた髪は日の光で赤い。
それはとても美しくて―
夢で見たあのコと同じで。
「なぁに?」
楓が大きな目で笑って
俺にそう問いかける。
見れば見るほど
本当にあのコと似てる。
ズキン。
理由不明の痛みが頭に走る。
「いや。何でもないよ」
言い出せなくて
そっけない返事を返した。
「…そう?」
楓は寒そうにしながら
真っ赤な絶景を楽しんでいた。
コートを羽織っていても
細くて色の白い首は寒そうで
俺はマフラーを外して
楓の首にそれを巻いた。
「ありがとう」
楓がそう言って
俺の胸にもたれかかる。
いつもならこのまま抱きしめて
キスをするのに。