赤の世界
確かにいつか――
いつかこんな事が―
その感覚ははっきりあるのに。
「悠?…顔が青いよ?」
立ち尽くす俺を見て
楓が驚いた声をあげる。
「うん…ごめん」
「大丈夫?…とにかく帰ろ?」
渡したばかりマフラーを
楓が俺の首へと戻す。
寒くはないと伝えたけれど
熱かもしれないと言い
楓はポケットのカイロまで
俺に手渡そうとしてくる。
懸命な楓を見ていると
少しずつ頭痛は去った。
けれど楓に大事を取らされ
実家へと帰される。
家で過ごす時間は退屈だ。
意識はすぐに今朝の事を
思い出そうとしてしまう。