赤の世界
たどり着いた屋上からは
今朝と同じ街並みが見える。
気がつくと日が傾いていた。
いつの間にかすっかり夕方だ。
オレンジの日が朝とは反対の
西側に浮かんでいる。
もうすぐ夕焼けが訪れて
また街を赤くするのだろう。
ここに初めてきたのは
小学校1年生のときだ。
景と毎日外を遊びまわって
色んなところを探索して。
その時にここの屋上は
鍵がないんだと知って。
あれからもう10年以上経つ。
昔はこの場所が大好きで
ちょくちょく来てたっけ。
いつからだろう
足を運ばなくなって――
でもいつか確かに
ここで今朝のような―
赤い日の出を見たはずだ。
そう思って昔を辿る。
髪の長いコなんていた?
記憶に潜って思い返すけど
溺れるだけで何も浮かばない。
だいたいあんな綺麗な髪
誰もが持ってるものじゃない。
気に入っていたシオリの髪さえ
楓の髪には遠く及ばなかった。