赤の世界
覚えている髪は
とても美しかったんだ。
あんなに美しいと思う髪は
楓の髪ぐらいだ。
後は…楓ととても似ている
赤い夢の中のあのコ。
サラサラと揺れる
夢の中の髪を思い出すと
やっぱりあの夢の女のコと
この景色を見た気がする――
だけど夢の中のコと
この屋上の景色を見るはずない。
そう考えると
もう楓の髪しか浮かばない。
西日が沈もうとしている。
赤みを増した光が
見渡す街並みの全てを染めた。
不思議な事にその光景を見ても
もう痛みは訪れなかった。
赤く染まる街を見ると
楓と夢の中の彼女の顔が浮かぶ。
2人の目や髪を思い出し
ぼんやりと重ねてみる。
やっぱり夢の中の彼女の目が
少し幼い目をしていた。
不意に夢の中の彼女が
幼い頃の楓の姿に見え出す――
「あ…」
思わず声が漏れた。
どうして今まで
気付かなかったんだろう。
似てるんじゃない。
2人は同一人物なんだ。