赤の世界
今朝の日の出のように
前にもここで日の出を見た。
夢の中に出てくる
少し幼い顔の楓と一緒に――
そんな気がしてならない。
理由はわからないけど
いまは2人とも
その事を忘れている。
「無理やりだな…」
独り言は空しく響いた。
せっかく屋上まで出向いたのに
結局何も分からない。
落ち着かない気持ちで見た
沈んでいく太陽は
今朝楓と見た太陽に比べて
少し悲しそうに見えた。
日が沈みきると
空には急に暗がりが広がる。
冷たい風を受けながら
今日4度目になる坂を歩く。
とぼとぼ歩くと久しぶりに
心の中に欠落感が現れた。
(何か大切な事を…)
(忘れている…?)
…ズキン。
“そうだよ”
そう答えるかのように
頭の奥が1度だけ痛んだ。