赤の世界

6. 哀色の忘却

 
ねぇどうして

俺達は出会いを忘れた?





「話があるんだ」

そう言って楓を呼び出す。

誕生日の日に会った
あのカフェのあの席。

「体調はもういいの?」

楓が俺の顔を覗き込んだ。





あれから変に胸騒ぎがして
体調は悪くないのに
3日間を寝込んで過ごした。

「大丈夫だよ」

本当は不安だったけど
特別告げなかったのは
早く本題に入りたかったから。

楓には聞きたいことが
山のようにあった。

そして出来ることなら全てを
肯定されたかった。





「俺達前にも…」

言葉が絡まる。

うまく喋れないまま
たどたどしく質問を続ける。

「どこかで会った事ないかな?」





なんとか言い終えて楓を見る。

「ぇ…?」

彼女は無垢な目で
ぱちぱちと瞬きをした。


 
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