赤の世界
その長い睫毛の瞬きが
何言ってるの?と俺を苦しめる。
「急にどうしたの?」
くすくすと笑う楓は
必死な俺の眼差しには気付かず
ただ俺の髪を撫でる。
「会ってたら黙ってないでしょ」
否定の言葉が重い。
そんなはずないんだ。
だって少し幼い楓の姿を
俺は知っているんだ――
「高校生のときは何してた?」
質問を変えた。
夢の中の楓は多分高校生だ。
その頃に俺が行きそうな所へ
出かけたりしてれば…
そう思ったから。
だけど楓の返答は
さっきの答えと同様に
まったく俺の
望んでいないものだった。