赤の世界
 
「高校生の頃は……」

楓が顔を困らせる。





「どこかに出かけたりしてない?」

(たとえばあの屋上とか。)




すがるような思いで聞いたのに。

「実家にいたから…」

いい辛そうに消え入るような声で
楓がぽつりとそう言った。





そうだった。
楓は大学進学で上京したんだ。





どうしてなの。

そんなはずないのに
辻褄が合わない。


あの女のコは誰?

楓のはずだ。

楓以外思いつかないのに。





楓が高校生の頃
俺達は一度知り合って

一緒に日の出を見て
何故かそれを忘れていて

俺は楓を夢に見て
ある日カフェで再会した

何が違うんだ。

あれは誰なんだ。





頭がパンクしそうだ。

頭を抱える俺を
楓が心配そうに見つめた。


 
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