赤の世界
「今日アユすごい暇だったのー」
部屋についてからも
相変わらず俺の腰を抱いて
甘えて話すその声は
少し拙くて高い音をしてる。
「今日もパパとママいなくって」
「へぇ。また出張?」
「でも悠がきてくれて嬉しい」
アユミの父親は大企業の重役。
そして母親はその秘書。
忙しいのか、
よく出張しているようだ。
そのおかげでアユミとは
夜遅くになっても会いやすく
感謝している部分がある。
「また柏木くんと遊んでたのー?」
「うん」
「放課後からすぐアユのとこに来てくれればいいのに」
女の子はいつもこう。
煩くて、図々しくて
騒がしい。
だけど俺の空っぽな心には
この騒がしさが丁度よかった。