赤の世界
 
数日間俺は寝込んだ。

誰にも会う気がしなくて
携帯の電源も切った。

自分から電源を切ったのは
事故の後初めてだった。





ぼうっと楓の顔が浮かぶ。

今頃怒っているだろうか。
連絡もよこさないで。


でも会えないんだ。
その目をきっと見れない。

夢の中の彼女に似ていたから
楓に惹かれたのかもしれない。

だけど今は見れない。

似ているのに彼女じゃない
その目を見るのが辛い。





そうやって逃げながら
俺は毎日無理やりに眠った。

もちろん夢を見るために。

彼女に会うために。

彼女を取り戻すために。





だけど俺には――







夢すら見えなくなった。




 
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