碧の時間(とき)






お父さんは仕事があるからって、東京に帰っちゃったんだ。






でもその前に、私にプレゼントをくれたんだ。






それは『夕貴(ゆき)』という名前。






私は『貴い』んだって、お父さんのお父さんがつけてくれたらしい。






――なまえ?






『そう。夕貴ちゃんって呼ばれたら、は〜いって返事するんだよ』






――ふ〜ん、ゆきねぇ






――じゃあ、キミにもなまえってあるの?






『生きてた時は、みどりって呼ばれてたよ』






――いきてた?






『……うーん、まぁ、ずっと昔ってことかな』






――ふーん……みどりちゃんね






私の名前が決まった日が、『キミ』の名前を初めて呼んだ日になったんだよね。








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