碧の時間(とき)






『赤ちゃん産むの、知ってたよ』






みどりちゃんは、おばあちゃんの隣で優しく微笑んだ。






『言ったでしょ?夕貴がいるから、私が存在できるんだって。ほら……そこに』






そして、そう言うとみどりちゃんは、私の腕の中で眠る赤ちゃんを指さした。






―― !!






……そうだったんだ。






みどりちゃんは、生まれ変わるために、私を守っていてくれたんだね。






『もう……行きなさい。優しいパパが待ってるよ』






おばあちゃんは、やっぱり逝ってしまうんだね。






みどりちゃんと……逝ってしまうんだね。






「うん……。おばあちゃん、さよなら。みどりちゃん、大切に育てるからね」






私は涙を流しながらも、一番の笑顔を見せて、病室を出た。






そして………






後ろを振り返ると、病室には誰もいなかった。








< 71 / 72 >

この作品をシェア

pagetop