Blood†Tear
高々と持ち上げられた剣は振り下ろされた。
しかし、彼の攻撃はレグルに届く事はなく、振り下ろした剣は宙を舞い地面に突き刺さっていた。
レグルとローグの間に割って入ったのは、地につきそうな程長い黒髪を1つに束ねた細身の女性。
長い脚でローグの剣を払いのけた彼女は彼を睨む。
邪魔をされたレグルはもう1つの剣に手を伸ばすが、喉元に添えられたら短刀に気づき動きを止めた。
無駄のない動きでローグに短刀を突き付けた彼女。
敵が味方かも分からず剣を握りながら警戒していると
「もう終わりだ。アイン」
何処からか聞こえてきた女性の声。
誰も居なかった筈なのに、ローグの背後から黒い扇子で顔を隠した女性が突然現れた。
「貴様、何故……!?」
「私が貴様のような愚民に消されるとでも思ったか、愚かな」
女性を目にした瞬間驚いたように声をあげるが女性は鼻で笑う。
彼女はローグを捉える女性に何か言うと、女性はローグと共に姿を消した。
ローグを連れ去り何をするつもりだと目を細めるレグル。
彼の仲間なのかと疑いを抱くと、目の前の彼女は頭を下げた。
「私はベイン・ローグ。フェルノーク国真の現王。以後お見知り置きを」
広い鍔をした黒い帽子を被り、黒いドレス、黒いカーディガンに黒い手袋を身に纏う彼女はベイン・ローグと名を名乗る。
顔の前に広げた扇子で顔を隠し、決して素顔をさらさなかった。