Blood†Tear
降り出した雨の中、彼女は1人、誰も連れずに其処に立つ。
本当に彼女がベイン・ローグなのか、疑問を抱くレグルだが、剣を手放し彼女の話を聞く事にした。
「10年前、私は彼に襲われ、王の座を奪われた。暫く身を隠していたのだが、10年という月日は長すぎたようだ。スウィール国の王女を傷つける前に、姿を現すべきだった。申し訳ない」
深く頭を下げる彼女。
とても悪い人には見えないと、レグルは彼女を信じる事にした。
「彼の身柄をこちらで拘束したい。きちんと始末をつけるつもりだ。それでも良いか?」
「構わない。しかしーー」
「真相が分かり次第、直ぐに報告をしよう。スウィール国内の兵士は直ぐに退かせる。そして、彼とスウィール国王女の婚約は破棄だ」
ベイン・ローグと名乗っていた彼をフェルノーク国で引き取りたいと言う彼女。
レグルはその提案に同意するが、条件があると言う。
彼の条件に納得がいかないと言うのならば、彼女の提案を受け入れる事はできない。
だが、レグルが条件を出す前に彼女は全ての条件を受け入れると答えた。
スウィール国の平穏が戻るまで、フェルノーク国は力になると言う彼女の言葉を聞き、レグルは彼女と握手を交わす。
「貴方が王の座についた時には、我が国との交流を望みたいものだ」
「喜んで、此方は貴女の国との交流を引き受けますよ。素顔を明かさなくとも、貴女は良い人だ。」
笑顔でそう言うと、顔を隠した彼女は微笑んだように見えた。
「ではまたお会いしよう、ラグナレア国王子、レグナード・ディ・ルーガン様」
彼女は最後に頭を下げ、その言葉と共に姿を消した。
まるで初めから其処に居なかったような、そんな錯覚を覚えるのだった。