Blood†Tear
青い瞳を真っ直ぐに見つめていると、レグルは一度頷き口を開く。
「スウィール国をラグナレア国の領土とする。しかし、スウィール国は今まで通り、何も変えるつもりはない。ラグナレア国は最低限の介入のみ行い、お前の望み通り平和に、幸せにする事を約束しよう」
その言葉にシェノーラは安心しホッと息を吐く。
ジークは彼女の様子に微笑むが、レグルは真剣な面持ちで言葉を続けた。
「しかしシェノーラ、お前からはその名も地位も私が奪う。
スウィール国王女、シェノーラ・フィール・ラグナー、お前は今此処で死んだ事にする」
その場にいた全員が目を見開いた。
それはないのではとジークは口を開くが、シェノーラに止められ言葉を飲み込む。
もう良いのだと、これが最善策なのだと、彼女の瞳はそう言っていた。
「お前は今から王女シェノーラではなく、1人の平民、シェイラ……シェイラ・ブロッガー、ジークの妹として生きろ。
そしてジーク、お前は彼女の傍から離れるな。執事として……否、1人の人間として彼女を守れ。それで良いな?」
レグルが出した条件に2人は見つめ合い、互いに頷くと肯定の返事を返す。
疲れたようにソファーにもたれかかるレグルはこの話はもう終わりにしようと言う。
シェイラ・ブロッガー。
彼女は名も地位も失う事になった。しかし、今の彼女はとても幸せそうに笑っていた。
「そうだ、リョーガ、彼女の傷を治してやってくれ」
「既に完了してますよ。それにしても、自身の怪我を治癒できないのは不便ですね」
思い出したように言うレグルはリョーガに命令するが、何時の間にか治癒を行っており、リョーガはシェイラに手を差し伸べた。
彼の手を取り立ち上がると頭を下げ礼を言う。
そんな彼女の手をニコニコしながら握る彼の腕を掴むのは不機嫌そうなジーク。
何時まで握っているのかとシェイラを彼から離し睨み付ける。
シェイラを挟み鋭い眼差しと朗らかな笑顔がぶつかる中、レグルは1人呆れたように溜め息を吐くのだった。