Blood†Tear
イースを先頭にして月明かりを頼り暗い山道を歩くコウガ達。
「おい待てこのチビ!」
「リオン様が、リオン様が浚われてしまったのです。銀髪の恐ろしい男に、リオン様が……イースは何もできなかった…何も……」
物凄いスピードで進む彼女を追いかけるレオンは声を荒げるが、悲しそうに言う彼女はスピードを落とす事も立ち止まる事もない。
最後尾を歩くクレアは彼女の話に何か興味を持ったのか鋭く瞳を尖らせていた。
「リオン様の居場所はわかっています。きっと彼処に……」
「ちょっと待てイース!」
「何ですか、話を聞いて下さいよ!」
リオンを助けに行くのだと言う事はわかった。
その為に力を貸して欲しいと言う事も。
しかし、そんな彼女をコウガは止める。
先程から待てだの止まれだの、協力する気はないのかと疑ってしまったイースは苛立ちを覚えながら振り返った。
「……え………?」
「どうも~」
振り返ったイースは立ち止まり、素っ頓狂な声を上げる。
藍色の髪におどけた笑顔、軽く手を振る人物を目にした瞬間、数回瞬きをした後、彼女は甲高い悲鳴を上げた。
「ギャーー!な、なな何で貴方が此処に居るんですか!?」
「何故と言われましても、貴女が連れて来たのでしょう?」
彼女の後ろに居たのはジーク。
大袈裟にも思える反応で彼女は声を上げる。
何故此処に居るのかという問いにジークは視線を下げた。
彼の視線を追い目線を落とすと、目に映るのは何者かの腕を掴む自分の手。
コウガの腕を掴んだ筈なのに、その手は何故かジークの腕を掴んでいて…
「へ?……うわぁー!コウガさーん!」
人間違えをしてジークを連れてきてしまったイース。
彼女は混乱したのかジークを突き飛ばし、近くにいたコウガに助けを求めるように飛び付くのだった。