Blood†Tear
家屋を出たコウガは、陽の光を浴び伸びをすと、村の様子を見渡した。
崩れた家屋は建て直され、枯れた草花は元気を取り戻す。
男達は力仕事を、女達は家事をするその光景は、今まで何事もなく過ごして来た、幸せな村の様子に見える。
小さな村だが人々は明るく、その表情は笑顔で溢れていた。
村の中を見回していると、木陰に1人、見覚えのある人物を発見。
藍色の髪をした彼は木に背を預け座り込み、苦しそうに咳をする。
「ジーク……?」
心配そうに声をかけるコウガ。
と言うのも、彼は血を吐いたのである。
「あぁコウガさん、お久しぶりです」
突然声を掛けられ驚いた様子を見せたが、口元の血を拭い笑ってみせる。
久しぶりと言う程長い間会っていない訳ではないが、久しぶりだと一応言葉を返す。
「身体、治ってないんじゃないか?」
「心配いりませんよ、何時もの事ですから」
吐血する彼を気にかけるが、当の本人はヘラヘラと笑い大丈夫だと言う。
見た感じは問題無さそうだが、無理しているのではとコウガは眉を潜めた。
「力を使うと何時もこうなんです」
人の心配ばかりして、呆れた人だと溜め息を吐くと口を開く。
「私は、力を使う度死へと近づく。命を削らなければ力を使えない、そんな馬鹿げた能力しか持っていないんですよ」
力を使うと命を削る。
先日の戦いで力を使った為、彼は怪我を負っていない筈なのに血を吐いた。
吐血するのは、死へと一歩近づいていると言う警告のようなもの。
役に立たない力だと、悲しそうに空を見上げ息を吐く。
「でも、だったら力を使わなければ……」
「確かに。ですが、そうもいかないんです」
命を削るのなら、その力を使わなければいい。
だが、そう簡単に解決できる話ではないようだ。