Blood†Tear
「簡潔に言えば、力を使わなければ戦えない、と言うのでしょうか。
武器を手にし、それを振るい敵を傷つければ、力を使った事になる。
この刀でも、それ以外のどんな武器を手にしようが、殺気を身に纏えば全て同じ。本当に、使い物にならない力ですよ」
刀を手にし呟くと、コウガを見上げ悪戯に微笑んだ。
そしてその刀をコウガに振り下ろし、触れるか触れないかの位置で止める。
「だったら戦うなとか、そんな愚問を言い出したりしませんよね?」
「ちょっ、危ないから!」
目の前で煌めく刃に驚きながら制止を求めるが、反応を楽しむように笑いながら刀を揺らしてみせる。
「今の私には、護るべきものがあります。それを護る為には、戦わなければならない時がくる。その時は、何の迷いもなくこの力を使いますよ」
刀を手放しニコリと微笑むジーク。
彼のその瞳は、強い意志を秘めたもの。
解放されホッとするコウガは、彼に何を言っても聞く耳を持たないだろうと、彼を見つめ笑みを零す。
何時もおどけた態度で、つかみ所のない彼の本心を少し知れたような、そんな気がして。
「この件、秘密ですからね。まぁ、知った所で心配する人など1人もいないと思いますが」
「あ、あぁ分かったよ。でも、シェイラも知らないのか?」
「お嬢様なら知っています。私がこの力で自暴自棄になっていた頃に出逢った方ですから」
彼の言葉に首を傾げるが、コウガの疑問に答える様子は無く、立ち上がると伸びをする。
すると、其処へ駆け寄ってきたレオン。
先に家屋から出たコウガを見失い、探していたのであった。
「お前、置いて行くなよ」
「ごめん、ごめん」
謝るコウガを軽く小突く彼は何かに気づき、物凄く嫌そうな顔をする。
「げっ、ジーク……」
「アハハ~、生きていましたか、しぶとい方ですね~」
憎たらしい言葉を吐くと、顔を歪める彼の頭を2・3度軽く叩く。
その手を弾きジークを睨むレオン。
見かねたコウガが2人の間に止めに入り、何とか大事にならずに済んだのだった。