Blood†Tear

 「簡潔に言えば、力を使わなければ戦えない、と言うのでしょうか。
武器を手にし、それを振るい敵を傷つければ、力を使った事になる。
この刀でも、それ以外のどんな武器を手にしようが、殺気を身に纏えば全て同じ。本当に、使い物にならない力ですよ」


刀を手にし呟くと、コウガを見上げ悪戯に微笑んだ。

そしてその刀をコウガに振り下ろし、触れるか触れないかの位置で止める。




 「だったら戦うなとか、そんな愚問を言い出したりしませんよね?」


 「ちょっ、危ないから!」


目の前で煌めく刃に驚きながら制止を求めるが、反応を楽しむように笑いながら刀を揺らしてみせる。




 「今の私には、護るべきものがあります。それを護る為には、戦わなければならない時がくる。その時は、何の迷いもなくこの力を使いますよ」


刀を手放しニコリと微笑むジーク。

彼のその瞳は、強い意志を秘めたもの。


解放されホッとするコウガは、彼に何を言っても聞く耳を持たないだろうと、彼を見つめ笑みを零す。

何時もおどけた態度で、つかみ所のない彼の本心を少し知れたような、そんな気がして。




 「この件、秘密ですからね。まぁ、知った所で心配する人など1人もいないと思いますが」


 「あ、あぁ分かったよ。でも、シェイラも知らないのか?」


 「お嬢様なら知っています。私がこの力で自暴自棄になっていた頃に出逢った方ですから」


彼の言葉に首を傾げるが、コウガの疑問に答える様子は無く、立ち上がると伸びをする。


すると、其処へ駆け寄ってきたレオン。


先に家屋から出たコウガを見失い、探していたのであった。




 「お前、置いて行くなよ」


 「ごめん、ごめん」


謝るコウガを軽く小突く彼は何かに気づき、物凄く嫌そうな顔をする。




 「げっ、ジーク……」


 「アハハ~、生きていましたか、しぶとい方ですね~」


憎たらしい言葉を吐くと、顔を歪める彼の頭を2・3度軽く叩く。


その手を弾きジークを睨むレオン。



見かねたコウガが2人の間に止めに入り、何とか大事にならずに済んだのだった。





< 163 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop