Blood†Tear
「リオンに会いに行きませんか?これを届けるついでに」
食材を持って彼に会いに行けばいい。
そう提案するが、女性は首を振り目をそらす。
「それは、ちょっと……」
「何故?」
「どんな顔をして、何を話せと言うんですか……
彼を苦しめてきた私達には、彼に会う権利はない……会わせる顔なんて、ないんです……」
彼の悲しみ気づいてやれず、自分達の幸せばかりを考えて、彼の力に頼り利用した。
彼を苦しみのどん底にまで追い込んだ自分達に、彼に会う資格などないと言う。
それに対し、当の本人であるリオンは、村人を見捨て逃げ出した事に負い目を感じ、彼等に会うのを躊躇っている。
このままでは、リオンと村人達が会う事は二度とないだろう。
罪悪感だけが心の中に残って、互いに深い傷を負う。
どうにか彼等の仲を取り持つ事はできないかと思考を巡らせるが、いい考えは浮かんでこない。
ジークはコウガにあまり深く関わらない方がいいと言い、悲しそうな瞳をするシェイラの腕を引き立ち去って行く。
レグルも彼の後を追い、レオンに促がされたコウガも仕方なく背を向ける。
しかし数歩足を進めた所で、彼はその足を止めた。
「明日の早朝、此処を出ます。それまでは、此処にいますから」
だから…
良かったら彼に、会いに来て下さい…
肩越しに振り返り微笑むと、彼は再び足を進める。
立ち尽くす女性の瞳は潤み、少し汚れたエプロンの裾を握り締める。
心配そうに見上げる子供達は女性の傍に寄り添って、立ち去るコウガ達に手を振るのだった。