Blood†Tear

バイオリンを弾き終わり、余韻に浸っていると拍手が送られる。


閉じていた瞳をゆっくりと開くと、手を叩くスティングの姿を瞳に映す。




 「あら、御機嫌よう、スティング、カンナギ」


 「久しぶりだな、ティム」


柔らかくウェーブのかかった金髪にオレンジの瞳。紺色のドレスにミニハットを頭に飾る彼女はティムリィ・ヴィネッド。

貴族育ちの上品な女性であり、ベイ・ローグと名乗る男を裏で操っていた人物である。




 「所で、あのお嬢様は殺さなかったんだって?」


破れ埃まみれのソファーに腰掛けたスティングの問いに、ティムリィはバイオリンをしまうとトランクを音を立てて乱暴に閉めた。


どう見ても不機嫌そうな彼女。


バランスの悪い丸椅子に腰掛けると微笑んで見せる。




 「彼女、生きておりますわね。この世から消すつもりでしたのに、しぶといお方ですわ」


にこやかに言う彼女だが、その言葉は鋭い棘を持つ。




 「あんな男などに任せるのではありませんでした。本当、使い物にならないくず、この世の塵、存在自体が罪なのですから」


楽譜に何か書き込む彼女。
力強く握りられたペンは真っ二つに折れていた。





 「あーあー、恐いよ?ティムリィ」


回転椅子に乗ったままリビングにやってきたのは白衣を着た男性。
乱れた髪をかきながら大欠伸をする。




 「驚かせてしまったのならごめんなさい、マット」


 「フンッ、腹黒女……」


ニコニコ微笑む彼女を見てナギは呟くが彼女には聞こえていないようだ。



背もたれを抱きクルクル回るのはマット・ディレクト。

乱れた茶の髪に黒縁眼鏡、白衣を着た彼は化学者である。




 「後2人……」


スティングの呟きに窓枠に腰掛けるカンナとナギが反応した。

庭を歩く女性を発見し彼女に手を振る。




彼女の名はエルウィン・アウロウ。
ショートの灰色の髪に黄色と赤のオッドアイ。
首には黒いチョーカーをし体中傷だらけの弓使いである。


リビングに辿り着いた彼女は片手を挙げ挨拶すると低い本棚の上に飛び乗った。





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