Blood†Tear

 「他に希望は?」


 「赤目の死神は、彼に任せたらいいかと」


ライアの問いにマットは椅子を回転させフリードへと向きを変えるが、既に其処に彼の姿はない。




 「あれ……?」


 「彼なら帰ったよ」
 「話が終わったら直ぐにね」


フリードが姿を消すのを見ていたカンナとナギ。

彼を止めなかった2人は笑って見せる。


勝手に姿を消した彼を知り、スティングは溜め息を吐くとライアに問う。




 「本当に彼奴を仲間に入れる気か?」


 「マットの言う通り、彼には死神を殺してもらう。その為の存在なのだから。何か問題でも?」


 「嫌、只彼奴はその名の通り、自由な奴だ。何を仕出かすかわかったものではない」


ライアを睨むその瞳を鋭く尖らせるが、彼は考え直す気はないようだ。
微かに覗く小さな唇は笑っている。




 「問題ない。不要になれば消せばいい。只それだけの事」


冷たく言い放ち狂ったように笑う彼等を見つめるエルウィン。

彼女は一言も言葉を発する事なく爪を噛む。


その姿を瞳に捉えたマットは口の端を吊り上げ笑い、手を振りながら椅子に乗ったまま自室へと戻って行った。




 「彼は化学者だからね、この話に興味はないか。カンナギとエルウィンは何かあるか?」


 「うーん……強いて言うならあの死に損ないかな」
 「そうだね、彼かな」

 「て言うか、彼しかいないじゃないか」
 「そうだね、彼しかいないね」

窓枠から飛び降りたカンナとナギ。

ナギの言葉にカンナは適当に返事を返す。

眠いのか欠伸をすると2人はリビングから出て行った。




微笑むライアはエルウィンへと目を向けるが、彼女は何も言わずに窓から出て行こうとする。


特に意見はないのかと思ったが、彼女は出て行く寸前で言葉を発する。




 「私の獲物は決まってる。初めから、その為の存在なのだから……」


振り返る事なく言うと、窓枠を飛び越え姿を消すのだった。





< 177 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop