Blood†Tear
星の煌めく夜空。
一際眩い光を放つ満月は雲一つ寄せ付けない。
湖は静寂に満ち、獲物を狙う動物達は静かな湖面を鋭く睨む。
深い森の中では虫達の合唱と梟の鳴き声が響いていた。
リオンの故郷、ナティス村から旅立ったコウガ達。
リオン、イース、セルビアの3人とは別れ、今は6人で旅をする。
故郷を出たリオンは2人と共に小さな町で身を隠す事にした。
力を失った自分達にはもう危険は及ばないだろうと、3人はコウガ達と別れたのだ。
ナティス村から少し離れた、綺麗な湖の広がるこの町に滞在する事になったコウガ達。
王族と言うのは凄いもので、易々と一軒家を借りてきたレグル。
今は6人揃ってこの家で過ごしている。
静まり返った真夜中、ベッドに寝転ぶコウガは窓越しに月を眺め、別室のシェイラは紅茶に映る月を見つめた。
レオンは屋根の上で月を見上げ、外で煙草を吸うレグルは煙を吐きながら月を瞳に映す。
それぞれが様々な心境で満月を眺める中、家から少し離れた公園のフェンスにクレアは腰掛けていた。
無表情で空を見上げる彼女。
綺麗な銀髪を風で揺らす中、何かに気付きフェンスから飛び降りた。
「逃げなくてもいいじゃないですか。そんなに私の事が嫌いですか?」
振り返ると、フェンスの向こうに居るジークと目が合った。
「あぁ嫌いだね、大嫌いだ」
「そんなに正直に言われると、私でも傷つきますよ」
彼を睨み言うクレア。
ヘラヘラ笑うジークは傷ついているようには全然見えない。
あまり彼と関わりたくないクレアは立ち去ろうとするが、フェンスの隙間を通過した彼の手に腕を掴まれそれを拒まれる。
苛立ちを覚えながら振り返ると、目の前に突き出されたチョコレート。
拍子抜けな顔をする彼女だが、それを奪おうと手を伸ばす。
だが、触れるか触れないかギリギリの位置にあるそれは掴めない。
悪戯な笑みを浮かべ揺らしてみせる彼は遊んでいた。
「この糞道化師が……」
汚い言葉を吐き闇夜に浮かぶ赤い瞳で睨むその姿は見ものだった。