Blood†Tear

居心地の悪くなった彼女は振り返り、フェンスの穴に腕を通し手を差し出す。


質問に答えたのだから、交換条件であるそれを渡せと言うのだが、嫌がらせか彼はそれを一口かじる。




 「殺してくれる、ですか……貴女、本当に一族を皆殺しにした、赤目の死神ですか?」


腹を立て彼の襟を掴んだが、彼の言葉に微かに目を見開くと手を放す。


フェンスの穴から腕を引き抜こうとするが、その腕を彼は掴んだ。



 「質問は1つだと言ったはずだ」


 「言いましたよ。ですが、先程の質問の答えは納得のいかないもの。私の求める答えは出ませんでしたし、カウントはなしと言う事で」


何かを企むように笑う彼から逃げようと腕を払うが叶わない。


不甲斐ないが、仕方なく彼の問いを聞く事にした彼女は抵抗するのを止めた。




 「では改めて、貴女に問います。貴女は本当に一族をその手で殺したのですか?」


紺の瞳で鋭く睨む。
顔を近づけフェンス越しに正面から見つめられ、クレアは一瞬息を止めた。




 「初めから、それを聞くのが目的だった訳か」


 「さぁ、どうでしょう」


先程の質問は前置きのようなもの。

騙されたようなそんな気がして彼を睨むと、彼は顔を背け誤魔化した。




 「信じられないんですよ、貴女1人で一族を皆殺しにしたなんて」


 「何が言いたい?」


 「只真実が知りたい、それだけです」


一番触れてほしくない過去。

それに土足で踏み居る彼は何の悪びれもなく言葉を紡ぐ。




 「私が、私がこの手で殺した。この鎌を振るい斬り裂き、あの狂った一族を皆殺しにした赤目の死神は、この私だ」


自分でもはっきりとは覚えていない。

多分、あの時私は血に狂った。

何故狂ったのか、何故戻ったのかはわからない。


でも覚えている事は1つある。


死体の山の中、体を血で染め鎌を持つ、自分の姿だけははっきりと、目に浮かぶように覚えている。


一族の皆を殺したのは、狂った血を滅ぼそうとしたのは、紛れもなくこの私だ。






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