Blood†Tear
それは曲げられ用のない真実。
思い出したくもない、消し去りたい過去。
月明かりに照らされる彼女の瞳は悲しく見え、ジークは少し動揺した。
一族を殺したのは彼女ではないのかもしれない。
彼女が罪を被っている、そう思っていた彼は真実を知り、言葉を失った。
「質問には答えた。これで十分だろ?」
一瞬気を緩めた彼の手を振り払うとチョコレートを奪い取る。
そのチョコレートを3分の1折ると彼へと投げ、何も言わずに暗闇へと姿を消した。
「少し虐めすぎましたかね……」
一度も振り返る事なく立ち去って行く彼女。
彼女の姿が消えた暗闇を暫く見つめた後、フェンスに背を預けて立つと受け取ったチョコレートを一口かじる。
「甘っ……」
舌を出し文句を言いながらも完食するジーク。
未だ変わらず眩い光を放つ満月を見上げると、何かを見つけた彼は眉を潜めた。
「煙……?」
隣町であろうその場から立ち昇る灰色の煙。
こんな真夜中に何が起こっているのかと疑問を抱きながらも、冷たい夜風に身震いすると、コウガ達の居る家へと戻って行くのであった。