Blood†Tear

冷たい風が吹き始めた頃、コウガ達は町を出ると隣町に繋がる林の中を歩いていた。


崩壊した町に近付くにつれ、火薬の臭いや血の臭いが漂ってくる。

その嫌な臭いに鋭い嗅覚を持つレオンは人一倍顔をしかめていた。


順調に先へと歩を進めていた彼等だが、林の奥深くに入った所で突然足を止める。




 「シェイラ、此処で待ってて」

 「え?あの……」


彼女を大木の影に隠れさせると剣を手にするコウガ。

その瞬間矢が放たれ、飛んできたそれを弾くと次に斬り掛かってきた人物と向かい合う。


ボロボロの服に傷や痣だらけの人物。


コウガと剣を交える彼の他に後7名、敵と思われる人物の存在を確認した。


クレア達も武器を手に取り戦闘に入っている。


レオンは槍使いと、クレアは鎖鎌を使う人物と戦うが、彼女は何かに気づき相手を突き飛ばすとこの場から姿を消した。


地を蹴り木々の間をすり抜け何処かへ向かう彼女の後ろ姿を、レイピアの突きと巨大な斧からの攻撃を交わしながら不思議そうに見つめるジーク。


身を隠したレグルは木陰に隠れ弓を放つ敵に狙いをすませ銃を構え、確実に敵を撃ち落とす。




ナイフで素早く斬りかかる人物を突き飛ばし、振り下ろされた剣を受け止めるコウガは戦闘に慣れていない彼等を不審に思う。


攻撃を交わしながら他の敵を見回すが、圧倒的にこちらに分がある。



彼等は何者なのかと眉を潜めていると、先程突き飛ばした男が何かに気づき地を蹴った。


彼の走る先には、大木に隠れ様子を伺うシェイラの姿。


危険を感じ助けに行こうと地を蹴るが、敵が立ちはだかり行く手を阻む。


舌打ちをし彼に斬りかかり走り出すが間に合わない。



シェイラの元へ先に辿り着いた人物は彼女を捉え首にナイフを突きつける。


人質をとられコウガは動きを止め近くのジークへ目を向けるが、何故か彼は気にする事なく敵と戦っていた。




 「おいジーク!」


 「…心配いりません。お嬢様なら大丈夫です……」


人質を取られている今、妙な動きは取らない方がいい。

なのに彼はコウガの怒鳴り声にも焦る事なく戦い続けた。





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