Blood†Tear

何が大丈夫なのかと怒りを露わにしていると、




 「ぐっ……うわっ……!」


前方から聞こえた唸り声。
そちらへと目を向けると想像もしなかった光景が目に入ってきた。


先程シェイラを捕らえていた男は地に倒れ、その首にはナイフが突きつけられる。

そのナイフを手に男を押さえるのはシェイラ。

気を緩めた男の鳩尾を肘で突くと、腕を捻りナイフを奪い彼を地に突き飛ばす。

そして素早く彼を押さえつけるとナイフを突きつけた。



お嬢様育ちでか弱い彼女が戦えるとは思わず驚くコウガ。




 「あぁ見えて腕は良い。身を守る術は知っているから安心しろ」

数名逃がしてしまったが敵を捕らえ、コウガの傍にやってきたレグルは彼の肩を叩く。


ジークはシェイラの捕らえた男の襟を掴み立たせると、にこやかに微笑みながら一発殴る。




 「何者です、貴方?」


襟を掴んだまま顔を近づけ問うと、彼はジークを睨み口を開く。




 「俺達はこの町の住民だ」


昨晩襲われた町の住民と言う彼は生き残りと言う事。
でも何故自分達を襲ったのか。
昨晩の敵と勘違いでもしたのだろうか。




 「何故襲ってきた?」


 「お前達がライアの敵だからだ」


彼の言葉に目を細めるコウガ。

ライアの敵と言う事は彼らは彼の仲間であるという事。

ならば何故町を襲った?


様々な疑問を抱いていると、レオンの捕らえる男の内1人が話し出す。




 「俺達はこの町の奴隷。人間として扱われなかった存在だ。そんな俺達を、彼が救ってくれた。奴隷を扱うこの町を滅ぼし、俺達奴隷を解放した。だから俺達は、彼の為に戦うと決め、お前達を襲ったんだ」


思い詰めているような物言いの彼。
救ってくれた彼に感謝するのは当然だが、だからと言って人を襲うべきではなかったと、彼は考え直していたようだ。




 「ライアと言うのは?」


 「黒いローブを着た人物。フードを目深に被っていたから、人相まではわからない……」


ライアの事を深くは知らないらしい。

救ってくれた彼の為、彼等は独断で行動していたようだ。





< 185 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop