Blood†Tear

悪い人達ではなさそうだし、生存者でもある彼等を町に連れ帰る事にしたコウガ達。


捕らえた彼等を立たせ町に戻ろうと足を進めるが、




 「あれ、クレアは?」


彼女の居ない事に気づいたコウガ。

辺りを見回すが何処にもその姿はない。




 「…彼奴、1人で町に行ってやがる……ん?この臭い…彼奴が追ってるあの男も、其処に居るのか……?」


鼻をひくつかせ臭いを辿るレオン。

血の染み付いた彼女の臭いをキャッチした彼は、彼女の傍に他にも誰か居ると言う。




 「ごめん、ちょっと行ってくる」


それを聞いたコウガは胸騒ぎがし、眉を潜めると地を蹴った。




 「おいコウガ!ったく彼奴は……」


何も考えず突然走り出したコウガを止めようとするが間に合わず、レオンは乱暴に頭をかく。




 「クレアさんの身に危険が及んでいるかもしれないんですね?」


 「あぁ、多分。1人で適う相手じゃない。なのに彼奴は……」


 「レグル、お嬢様を頼みます」


深刻な問題に悩む中、ジークはシェイラをレグル託す。


クレアが何処かへ行くのを目撃していた彼。

それを止めなかった自分にも責任があると、彼女の元へ加勢に向かうと言う。


レグルにシェイラとレオンを連れて戻れと言うと歩みだす。

しかし、何者かに服の袖を掴まれそれを拒まれた。




 「私も行きます」


 「お嬢様、しかし……」


振り返ると、強い意志をもつ茶の瞳と目があった。




 「彼女が危険な状態ならば、私も居た方がいいはずです。だから……」


袖を握り締め彼を見上げるシェイラ。

一方、彼女を危険な目に合わせたくないジークは眉を潜める。




 「行ってこい。彼等を住民に預けたら俺達も直ぐに向かう。だから、早く行け」


レグルに促され、ジークは頷くとシェイラを抱え地を蹴った。


その後ろ姿を見送ると、レオンと共に急いで町へと駆け出すレグル。


一際強い風が吹き、乱暴に木々を揺らす中、羽を休める小鳥達は羽ばたき、まだ散るはずのない青葉が舞う。

それはまるで何か不吉な事が起きる前触れのような、そんな気がして、不安な気持ちが一杯になった。




< 186 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop