Blood†Tear
家は焼け焦げ崩れ落ち、残った壁は赤い血で染められる。
地に転がる数え切れない死体には蝿が集り、未だ燃えていた小さな炎は風に吹き消された。
灰色の空の下、崩壊したその町に佇むのは銀髪に赤のメッシュを入れた色白な男性、フリード・ブラッドリィ。
血の滴る人の肉を喰う彼は死体の頭を踏みつけ冷たく見下ろす。
「やっぱり、日が経った肉は不味いな」
口に含んだ肉を吐き出し振り返る彼は嫌味に微笑んだ。
彼の後方にはもう1人、銀髪を風に靡かせる女性の姿があった。
「君も喰えば?死体なら、そこら変に転がってる」
赤い瞳で鋭く睨む彼女に声をかけるが反応はない。
只ジッと睨み続ける彼女に呆れ、彼は鼻で笑うと歩み寄る。
「我慢するのもいい加減止めなよ。本当は喰いたいんだろ?喰いたくて喰いたくて仕方ないのに君は我慢して、その空腹を紛らわす為に他の食材を食ってきた。
だけど、そろそろ限界なんじゃないか?クレア・シンク」
彼女の目の前に立ち、頬に触れ色白な肌を赤く汚す。
その指が唇をなぞった瞬間、クレアは鎌を手にすると彼に斬りかかった。
「私は…私はお前とは違う……お前みたいに、血に狂ったりしない……!」
攻撃を交わし後ろへ跳んだ彼を追い、地を蹴り距離を縮めると鎌を振り下ろす。
力任せのその攻撃を彼は短剣で受け止めると冷たく笑う。
「狂わない?冗談は止めろよ、クレア。
お前はあの時狂ったじゃないか。一族を皆殺しにしたあの時、完全に」
「っ五月蝿い!」
怒りを露わにし彼を突き飛ばすと再び斬りかかる。
しかし、振り下ろされた鎌は難なく交わされ、彼は柄を踏み彼女の後ろに跳ぶと短剣を首に突きつけた。
「あの時の君は綺麗だった。悲鳴をあげる暇さえ与えず肉を裂き、腕を切り落とし胴を斬る。噴き出す血をその身に浴び他人の血に染まる君の姿。
その姿がこの瞳に焼き付いて離れない。もう一度見たくてたまらないんだ。だからさ、見せてよ、血に狂ったあの時の姿を……」
耳元で囁きうなじを舐める。
鳥肌が立ち身を震わせると、地に突き刺さった鎌を引き抜きそれを振り回した。