Blood†Tear
数多くの星が瞬き始めた頃、コウガとクレアを除く4人の姿はリビングにあった。
本を読み紅茶を飲み、他愛ない話に盛り上がる。
それぞれがくつろぐ中、突然家の扉が勢い良く開かれた。
何事かと4人の視線が集中する。
現れたのは、血まみれのコウガとクレア。
クレアの肩を借り歩くコウガは微かに意識があるようで、虚ろな瞳で前方を見つめていた。
「どうしたんだよ、お前ら!?」
椅子を倒しながら立ち上がったレオンはすぐさま2人に駆け寄った。
支えていたクレアから放れ崩れ落ちるコウガを受け止めたレオン。
深く負った傷を目にし顔を歪めるとクレアを見上げた。
身体中を血に染めてはいるものの、怪我を負っているようには見えない。
その血は彼女のものではなく、コウガの流した血であるようだ。
「貴様ーー!!」
コウガが怪我を負った事に関係しているであろう彼女につかみかかるレオン。
怒鳴りつけ胸倉を掴むと鋭く睨む。
「何を――!」
問いただそうと声を荒げるが、彼女の顔を目にした瞬間言葉を止め息を呑む。
赤い瞳に光はなく、血の付いた頬は濡れていた。
潤んだその瞳からは止めどなく涙が流れ、次から次へボロボロと零れ落ちる。
声もあげず泣く姿に、レオンもその他3人も驚き言葉を失った。
「…私が……私が、コウガを……コウガを……」
傍に居たレグルは泣きながら言う彼女を引き寄せ、涙で濡れる顔を隠すように自分の胸に押し付ける。
そしてシェイラに目で合図を送り、未だ泣き続けるクレアを彼女の部屋へと連れて行った。
シェイラは彼の合図に頷くとジークにコウガを運ばせ、難しい顔をしながら部屋の扉を閉め治療を始める。
「んぁぁーー!糞っ!!」
1人残されたレオンは大声をあげ、乱暴に頭をかくと壁を殴る。
深く息を吐き壁に背を預けると、クレアの消えた部屋へと目をやり、次にコウガの部屋へと目を移す。
じっと閉じられた扉を心配そうに見つめ、無言で見守り続けるのだった。