Blood†Tear

部屋の扉はノックもなしに開かれた。


勢い良く押し開けられた為、扉が壊れてしまうのではないかと心配になる。




 「おい聞け赤目の死神!」


跳ね返ってきた扉に身をぶつけそうになりながら叫ぶレオン。


灯りもつけない暗い部屋の中、ベッドの傍で縮こまるクレアに声をかける。


しかし、彼女は部屋に響いた騒音にも、彼の声にも反応する事はなく、伏せた顔を上げる事はなかった。




 「ったく……いい加減にしろよな……そんな姿見たくないってんだよ……」


溜め息を吐きぼそりと呟くと頭の後ろに腕を組む。




 「コウガは無事だ。安心しろ」


彼のその言葉に、ピクリと身を震わせ反応を見せたクレア。


恐る恐ると言った感じでほんの少し顔を上げた。




 「もう心配ない。だから、お前もそろそろ立ち直れよな」


充血し腫れた瞳を目にしたレオンは顔を背け、天井を見上げた彼はそれだけ言うと立ち去って行く。



扉が閉まり、再び暗闇の中に1人残されたクレア。


膝を抱える腕の中に埋めていた顔を上げ、閉じられたら扉をじっと見つめる。



窓辺のカーテンが夜風に揺れ、はためく音に目を向けると、窓の外に浮かぶ星が1つ、煌めきながら流れて行った。



彼女は星の流れた夜空を暫く見つめると、涙で濡れた頬を拭い目を擦る。


そしてゆっくりと立ち上がり、長い銀髪を靡かせながら、部屋の扉へと歩んで行く。



何かを乗り越え決意したような彼女の後ろ姿。



欠けた月は彼女を後押しするようにその背を照らし、瞬く星々は煌めきながら静かに見守る。



迷い込んだ風さえも、夜の音色を奏でる虫達さえも、彼女を応援しているような、そんな錯覚を覚えてしまいそうになる、ある日の夜の出来事だった。






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