Blood†Tear
不安そうなその表情に目を細め、彼は傍にあった彼女の手をそっと覆うと優しく握り締める。
「もし、君が血に狂った時は、正気を失ったその時は、俺が君を止めてみせる。絶対に誰も傷つけさせない。必ず君を救ってみせる。
俺は君を殺さない、死なせたりしない」
そのスカイブルーの瞳は澄んでいた。
彼にこの命を託していいのではないかと、心は揺れ動く。
「正直、闇に抗い続けるのは辛い事だと思う。生きる事で、悲惨な過去を背負い続けなければならい事もわかってる。
だが、その辛さに耐えきれなくなったその時は、俺に頼れ。俺で役不足なら、仲間に頼ればいい。
君の周りには、沢山の仲間がいるのだから」
仲間、か…
今まで1人で生きてきた彼女。
仲間なんてものを作ろうなんて、思った事もなかった。
否、仲間というものを作る事なんて無理だと、そう思っていたんだ。
なのにそんな自分の周りには、何時の間にか仲間と呼べる者達の姿があって、不思議と彼等と共に居る事が当たり前のよに感じるようになった。
そして、少しずつ生きる喜びを覚え始め、死にたくないと、生きたいと思った事だってある。
生きろだなんて、死ぬななんて、一度だって言われた事はない。
そんな言葉、縁のない言葉だと思っていた。
なのに彼は、こんな私にすら優しく声をかけ、手を差し伸べてくれる。
そして彼等は何も聞かず、只見守ってくれた。
こんな気持ちを抱くなんて、思いもしなかった。
彼等の傍に居たいなんて、そんな気持ちを抱くなんて。
「…約束だぞ……」
「え……?」
「私を救ってくれるんだろ?」
「あ、あぁ」
遠慮がちに首を傾げ訊く彼女。
サラリと揺れる銀髪に見とれながらも彼は頷いた。
「なら私は、貴方を護る為に生きるよ」
「え?俺を護る……?」
「…貴方に死んでもらっては、困るから……」
「クレア……」
彼を見上げ、少し頬を染め微笑む彼女。
何時も無表情で無関心。
そんな彼女の今まで見たことのなかったその笑顔。
こんな表情もできるのかと、微笑ましくなった彼は眩しそうに目を細め、暫く彼女を見つめるのだった。