Blood†Tear
「おはよ~御座いま~す!」
勢いよく扉を開け姿を現したのはジーク。
にこにこと微笑みながら元気よく挨拶をする。
まだ回復しているかもわからない怪我人の部屋に大声を上げ入って来るなんて、彼は何を考えているのだろう。
「おはよう、ジーク」
「……」
何事もなかったように自然にクレアの手を放し、爽やかに微笑むと挨拶を返す。
一方クレアはすぐさま笑顔を消し、何も言わずに部屋を出て行った。
「あれ、お邪魔でしたか?」
「嫌、そんな事ないよ」
「そうですか~?」
伸びをするとベッドから降り、何か疑うような目つきの彼の横を通り過ぎリビングへと向かう。
「お前、もう動いて大丈夫なのか?」
「あぁ、もう平気だ。心配かけてごめん」
姿を現したコウガに声をかけたのはレオン。
元気そうな彼を目にし安心したのか大欠伸をしながらソファーに倒れる。
「おい占領するな、ソファーを」
「うぅ~…少し位いいじゃないか……」
外に出ていた様子のレグル。
彼は片手に持っていた新聞で寝転がるレオンの頭を叩く。
クッションを抱き顔だけを上げ反抗するが、新聞を広げるレグルに睨まれ渋々と言った感じで身を起こす。
「あ!摘み食いは止めて下さい、クレアさん!」
キッチンからはシェイラの声。
注意を受けたクレアは口をもぐもくと動かしながら朝食を運ぶ。
キッチンに向かったクレアはシェイラの手伝いをしているのかと思ったのだが、それは勘違いだったようだ。
どんな事よりも食い気を優先する彼女。
少し期待したのが馬鹿だった。
其処に広がるのは何ら変わりのない何時もの風景。
他愛ない話に笑い合い、冗談混じりの会話を交わす仲間達の姿。
自分を偽る事などなく、素の表情で打ち解けられる彼等の姿が其処にはあった。