Blood†Tear
「私を造ったのは、マット・ディレクトと言う化学者です。彼は人型をした器に魂を植え付け、人と何ら変わりない私達、ホムンクルスを造り出しました」
「私達、と言う事は、君以外にも存在するのか?」
疑問を抱いたレグルは話の途中に割ってはいると問いかける。
すると彼女は嫌な顔1つせずに頷いた。
「私は№13、最後に造られた、13番目のホムンクルス。私以外に12人存在しましたが、今ではもう、生き残ったのは私1人……既に皆、彼の手によって消されている……」
顔を伏せ拳を握る彼女。
だが、直ぐに顔を上げ話を続けた。
「私達が造られた目的は只1つ。アリューと言う、彼が第一に発明したアンドロイドの強化の為。その為だけに、私達は造られた」
外では風が強まり、がたりと窓硝子が揺れ音を立てた。
彼女は一瞬身を震わせ振り返るが、風の音だとわかると言葉を続ける。
「彼女は彼に従順に従う、心を持たないアンドロイド。彼女は私達を殺す事を命じられ、私達は自身を守る為に彼女と戦った。
この身体は、どんな深手を負っても自然に完治する。でも、こんな私達でも、痛みは感じるんです。
何度刃で身体を貫かれようと、どれだけ多量の血を流そうと、身体が動く限り戦い続け、不要となれば切り刻まれ、燃え盛る炎に焼かれ廃棄される。
彼にとって私達は只の玩具。道具でしかないんです」
ふと外に目をやれば、雨が降り始めていた。
風は強まり、雨粒を窓に打ちつける。
「初めは13人居たホムンクルスが、1人、また1人と次々に消え、残り数名となった時、私達の抹殺が決定しました。
消される前に何とか逃げ出したものの、呆気なく居場所は見つかり、このざまです。
何とか逃げ延び、さ迷い歩いていた所を貴方に救われたと言う訳です」
話を終えた彼女は1つ息を吐くと目を伏せる。
そして顔を隠すようにフードを目深に被るのだった。