Blood†Tear
大粒の雨が振りしきる翌朝。
灰色の雲の広がるどんよりとした空を見上げ、重い溜め息を吐くとカーテンを閉める。
「おはようごさいます」
「おはよう」
部屋を出たコウガはリビングに出るとグラスに水を注ぐ。
「…ん……?」
冷えた水を片手に口元に添えた瞬間、彼は何かに気づきグラスを放すと数回まばたきを繰り返す。
目の前に居るのは、ウェーブのかかったプラチナプロンドの髪に翡翠色の瞳をした女性。
見覚えのない彼女に誰なのだろうと首を傾げる。
「彼女はレグルの客だそうですよ」
「レグルの知り合い?」
コウガの疑問に答えたのはジーク。
紅茶を優雅に飲みながら歩み寄ってきた。
「私も深くは知りませんが、昨晩何かあったようですね」
キッチンに姿を消す女性の後ろ姿を見つめるジーク。
何か不信な事でもあるのだろうか、目を細めると紅茶を口に含む。
階段を降りてきたクレアは女性を目にしても特に変わった様子は見せなかった。
しかし、椅子に座り菓子を摘む彼女の瞳は鋭く、朝食を運ぶ女性の姿を追っていた。
続いてリビングにやってきたのはレオン。
大欠伸をしながら差し出されたミルクを口に含むが、それを飲み込む前に吹き出した。
「ゲホッ…なっ……だ、誰だよ、お前…!?…ぐふっ……!」
咳き込みながら目の前の女性を指差すレオン。
しかし、その問いの答えを聞く前に、彼は再び眠りについた。
と言うのも、彼の吹き出したミルクを真っ正面から浴びたクレア。
彼女が彼を殴り飛ばし一撃でノックアウト。
床に倒れる彼を放置し洗面所へと向かう彼女は苛立ちを露わにしながら物凄い音を立てて扉を閉める。
ヘラヘラ笑うジークは扉が閉まる前に耳を塞ぎ、コウガは呆れたように溜め息を吐く。
飲み物を運んでいたシェイラは手を滑らせ落としそうになり、丁度外から戻ってきたレグルは何事だと眉を潜める。
女性は不思議そうに首を傾げ、レオンは扉の閉まる音に無意識に身を震わせ反応するのだった。