Blood†Tear
「…信じられねぇな」
声をあげたのはレオン。
赤く腫れた頬をさすりながら目の前に座る女性をじっと見つめる。
朝食を済ませた後、レグルの客と言う彼女の話を聞いたコウガ達。
レオンの言う通り、それは信じがたい事実だった。
「本当に、人と何ら変わりない。造られた存在だなんて考えられないな」
コウガの言葉に彼女は証明しようとナイフを手に取った。
「それで、名前は?」
「№13です」
ジークの問いに答えながら袖を捲り腕にナイフを突きつける。
だが、そのナイフはレグルによって奪われた。
「傷が治るからって自分から傷付けるのは止めろ。痛みは伴うんだろうが」
腹を立てている様子の彼を見上げた彼女は頷く。
「それで、名前は?」
「№13です」
ジークの問いにすぐさま答える彼女。
顔色1つ変える事はない。
「話は大体わかったよ。レグルが言いたいのは、彼女を助けたいって事だろ?」
「まぁ、そうだな」
彼女と出会ったのは何かの縁だ。
このまま知らぬ振りなんてできやしない。
命の危機が近づいているとわかっていて、救わない奴がいるだろうか。
コウガは頷き肯定の意を示し、レオンは反対する気はないと言う。
クレアは話を聞いていないのか何も言わず、シェイラは当然同意だと微笑んだ。
「それで、名前――」
「いい加減にして下さいませんか?ジーク」
三度の質問に遂に怒りが頂点に達したシェイラは微笑みながら注意する。
笑ってはいるものの、どこか恐ろしい彼女にジークはヘラヘラ笑い舌を出して謝った。
「……アンバー……」
「?」
「お前の名前だ。№13だと言い辛い。だから、アンバー」
「アンバー……」
何か悩んでいると思ったら、女性の名前を考えていた様子のレグル。
彼の提案にその名をそっと口にする。
「嫌か?」
「否、良い名前だ」
ふわりと微笑む彼女。
その笑顔はどう見ても、偽物の笑顔には見えなかった。