Blood†Tear
ナイフを手にしたアンバーは身を屈めアリューを迎え撃つ。
風を切りながら繰り出された拳を交わし、素早くナイフを突き出した。
しかし、アリューは身を捻りそれを交わすと背後に回り込み蹴りを入れる。
それを避けきれず腰に激痛が走る中、大勢を崩しながらも振り向き際にナイフを投げた。
飛んできたナイフをアリューは難なく掴むとクルリと回し、刃を下に向くように握り直す。
そして、倒れたアンバーの襟を掴むと手にしたナイフを振り下ろした。
「ぐっ……!」
顔面に振り下ろされたナイフを顔を背け何とか交わしたのだが、そのナイフは深々と首に突き刺さる。
「っ…あ゛ぁー……!」
アリューを力の限り突き飛ばし、一旦距離をとると突き刺さるナイフを引き抜いた。
黒い血が勢い良く噴き出し、顔を、髪を、ローブを真っ黒に染めてゆく。
荒い息をする彼女は再びナイフを手にフラフラと立ち上がる。
既に傷は塞がりかけ、溢れ出る黒血は止まっていた。
地を蹴り木の幹に身をぶつけるアリューとの距離を縮めナイフで斬りつける。
顔色1つ変える事のないアリューは身を屈めると迫って来たアンバーの腹に膝蹴りを入れた。
そして首を引っ掻き塞ぎかけていた傷口を開く。
再び血が溢れ痛みに顔を歪めながらもアリューに斬りかかる。
心臓を狙い、顔を狙い、腹を狙い、何度もナイフを振るい続けた。
しかしどの攻撃も当たる事はなく、掠り傷さえもつけられない。
悔しさから唇を噛みナイフを持ち替えた時だった。
「ぁ……くっ……」
突然息が出来なくなった。
違和感を覚え視線を落とすと、胸を貫く鋭い刃が目に入る。
改造された右腕は刃へと姿を変え、アンバーの胸の中心を貫く。
頬を黒血で汚しても表情を変える事などなく、更に深々と刃を突き刺し傷口をえぐる。
血を吐くアンバーは為す術もなく、握っていたナイフは地に落ちた。
脱力し、ダラリと両腕を下げアリューにもたれかかる。
意識が朦朧とする中で、彼女は1つの銃声を耳にした。