Blood†Tear

 「…止めろ……もう、止めてくれ……彼は関係ない……彼は関係ないだろ……!?」


両手を付き黒血を吐くアンバーはマットを見上げフラフラと立ち上がる。




 「お前の狙いは私だろ……?私を消したいんだろ……?…だったら殺せ!私を殺せ!」


胸の傷口に手を添えながら歩み寄る彼女を瞳に映し、銃を回しながら遊んでいた彼は目を細めた。




 「…頼むから…彼に手を出さないで……彼に手を出すな……!」


白衣の襟を掴み声を荒げる彼女。
そんな彼女の鋭い瞳を見下ろすマットは嫌味に笑う。




 「確かに、僕は君を消しに来た。君を消せさえすればそれで良いんだけど、そうは言ってられないんだ。彼を殺す事は、ライアが決めた事だから」


だから彼も此処で殺すと言う彼の言葉に目を見開くアンバー。


悔しそうに唇を噛むとマットの首にナイフを突きつけた。




 「ハハッ、僕を殺す気?仮にも僕は君の製造者、君の親だよ?」


 「…殺れるさ……例え貴方が私の親であろうと関係ない……彼を救う為なら、私は――」


銃声が鳴り響く。

散る黒血。

痛みに目を下ろすと、腹部に銃を突きつけられ、ローブは黒く滲んでいく。


怒りのあまり周りが見えていなかったアンバー。

マットが銃を所持していた事さえも忘れていた。




 「っ……」


 「無理だって。君は僕を殺せない。君は誰も救えないんだ」


彼女からナイフを奪うと突き飛ばし、木の幹に背をぶつけ座り込む彼女の胸を撃ち抜いた。


血を吐く彼女の髪を掴むと立ち上がらせ、ナイフを頬に滑らせる。


頬は切れ血が伝うが、そこからの痛みは感じない。


マットは虚ろな瞳の彼女を見下ろし笑うと、血だらけの胸に手を突き刺した。




 「っああぁぁぁーー!!」


目を見開き悲鳴を上げる。

あまりの痛みに目の前のマットの顔を引っ掻いた。



噴き出す黒血は白い白衣を黒く染め、引っ掻かれ血の滲む頬をも黒く染める。


胸に突っ込んだ手を引くと、彼のその手の中にはドクリ動く、一塊の物体が握られていた。







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