Blood†Tear
貫かれた傷口から血が溢れ、痛みに耐えながらレグルはアンバーの元へと駆け寄った。
マットの傍を通る際2人は撃ち合い、レグルの太股を銃弾は掠り、マットは肩を撃ち抜かれる。
「アンバー!」
「……」
彼女の名を呼び体を揺する。
しかし、反応は無い。
力無く首をもたげ、光の無い虚ろな瞳で何処か見つめる彼女はまるで脱け殻。
人形のような彼女をレグルはそっと抱き締めた。
「フフッ…もしかして、彼女の事気に入ってたりでもした?ハハッハハハハッ……」
肩を震わすレグルを見下ろし、何が可笑しいのか笑い声をあげるマット。
その声を聞きながらレグルはアンバーの瞳に手をかざし、開かれたままの瞳をそっと閉じた。
「君が望むなら、また造ってあげるよ。次はもっと完璧に、君に従順に従う操り人形をね。フフッ…ハハハハハッ……ハハハッ――」
「…黙れ……」
低い声に次いで鳴り響く銃声。
腹を抱え、壊れたように笑い続ける彼の頬を銃弾が掠る。
「っと…危ない……」
銃弾に触れた茶髪が散り、頬からは血が伝う。
眼鏡を押し上げながら、鋭い瞳のレグルを見下ろした。
「…消えろ……殺すぞ……」
アンバーを抱きかかえ銃を構えるレグル。
怪我を負う手で握る為、銃は赤く染まり血が滴る。
自分の額に向けたれた銃口を見ても、マットは脅えた様子を一切見せる事はなかった。
「そんな傷だらけの体で言われても、何の脅しにもなりやしない。大体その銃、弾入ってるの?空発なんじゃない?」
目を細め余裕綽々に言う彼は嫌味に笑う。
何を言われようと、レグルは銃を下ろそうとはしない。
じっとマットを睨み付ける。
「でも、今回は退くよ。こっちも早く修理しなくちゃいけないし、今物凄くうずうずしてるんだ、実験がしたくてさ……」
銃を投げ捨て倒れるアリューの髪を掴む。
そして高らかな笑い声を残し、その場から姿を消した。