Blood†Tear
「今日この町を出る」
翌朝、姿を見せたレグルが口にしたのはその一言のみ。
それだけ言うと、一切質問に答える事無く自室に戻る。
「いきなり何だよ」
「あの様子だと、引き止めるのも無理ですね。さ、彼の逆鱗にふれる前に身仕度を始めましょう」
突然の決定に戸惑い、疑問を抱きながらも身仕度を始めだす。
コウガはソファーに寝転ぶレオンを引き連れ部屋に戻り、クレアはをフルーツを摘みながら片付けを始める。
シェイラは階段を登りながら、閉じられたレグルの部屋を心配そうに見つめていた。
荷物は少ない為、身仕度は直ぐに済み、さっさと家を引き払う。
「…行こうか」
一度湖の方へと目を向けたレグルはそう言うと歩き出す。
「それで、次は何処に?」
「彼奴等の手掛かりは何も無いしな」
「ですが、此方から探さなくとも、彼等の方から姿を現すのではないでしょうか」
「そうですね。その確率の方が高いでしょう」
ジークの言葉に頷くシェイラ。
コウガも同じく賛同するが、レオンは理解できておらず首を傾げる。
「…彼等にとって私達は目の上の瘤。目的を達成するのに邪魔な存在であり道の妨げ。早めに消しておきたいと思うのは当たり前だ」
最後尾を歩くクレアの説明にやっと理解したレオンはなるほど、と頭を振る。
が、振ったかと思うと勢い良く振り返り、口数の少ない彼女の言葉に驚いた表情を浮かべていた。
まばたきを繰り返し見つめてくる彼を睨むクレアは飴を噛み砕くとそっぽを向く。
そんな2人の様子を近くで見ていたコウガは苦笑い。
ジークとシェイラも笑みを浮かべ、先頭を歩くレグルはその様子をそっと見守った。
アンバーの件について何も触れてこない彼等。
気を使わせてしまっていると感じたレグルは全てを話す。
冷たい風に木々はざわめき、小鳥達は羽ばたいて行く。
枯れた木の葉は風に乗り、静かな湖の水面に舞い降りた。
音もなく着水し、波紋を広げるそれはゆっくりと、水流に任せ流れて行く。
躍るように円を描き、水面を楽しそうに滑っていた。